MARKETING 2015.04.20

ブライダル業界に新しい価値観を。一生に一回だからこそ、男性もカッコよく。

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「カルチャーショックが原点」

お話を伺った久住英広さん

―久住さんはこれまで、どのようなお仕事をされてきたのですか?

元々はアパレルのセレクトショップで6年ほど経験をした後に、自身の結婚を機にブライダル業界と触れる機会がありまして。その時からブライダル業界に携わっています。

―ご自身の結婚の時に、ブライダル業界に転身をするきっかけを作った出来事があったんですか?

そうですね。それまでアパレル業界で働いていたということもあって敏感だったのだと思いますが。結婚式の衣裳選びの際に、式場から紹介されて行った提携の衣裳店に自分が着たいと思えるものが無かったんですよね。それでいて、15万円程度のまとまった金額がかかってしまうのが通例で。カルチャーショックでしたね。ですが、一方ではブライダル業界への可能性も感じました。初めて体験したブライダル業界で、顧客に自信を持って勧めることのできない商品が提供されている現実。結婚式という一生に一回のライフイベントにも関わらず、商品バリエーションも少なく、選ぶこともできないのか疑問でした。 

―そのような状況になっているのは、どうしてですか?

ブライダル業界自体が女性スタッフが中心なので、男性視点で見たときに「これを着たい!」と思えるアイテムが並んでいないんです。実際に、私の結婚式の際も式場の提携先とは違うところで自分で探して購入をしました。

―このようなご自身の経験から、ブライダル業界に脚を踏み入れることになったわけですね。

はい。そういった課題を受けて、もっと業界を盛り上げていければとも思いましたね。

「本質を追求するスタイル」

―ブライダル業界のメンズ市場の現状をもう少し詳しく教えてください。

メンズの衣裳は、売り手主導の販売なんですね。アレンジを加えないので、チェーンがついたり、タイをシルバーで留めてみたり、lapelが二重になったりなど、単体そのものにどんどん装飾過多の商品が多くなってきている現状があります。 だったら実際にコーディネートでアレンジしていこうとしていても、現場が女性メインの世界ですので、仕入も販売も男性目線にはなりにくいですね。だけど、僕はそれを変えたかった。もっと、オーセンティックなスタイルにしたものに、最新トレンドを反映したものをポイントで入れていくのをやっていきたいという思いがあります。

―そのように思ったのは、どうしてですか?

ブライダル業界に転身してからは、インポートの仕入を結構やっていたんです。色味が映えるインポートなどを含めて、アパレルのセレクトショップを意識した売り場の雰囲気作りをしていました。ですので、オリジナルの企画、スーツ、シャツ、小物なども全てブライダルのメーカーではなく、大手セレクトショップが使っているメーカーを使用して、生産背景にこだわったものづくりを心がけていました。

当時から本質を追求する姿勢は大切にしていたので、「結婚式のたかが1日のために顧客は本質を追求するのか?」という疑問もあると思いますが、だからこそ本物を対価に見合う形で提供したいと。売り手本位の発想だから出てきてしまう「レンタルだから、クリーニングなどで劣化していくから、化学繊維でいいや」という発想ではなくて、例えばウール素材で本当に上質だと思えるものを提供して、それに見合った小物などを仕入れ、シャツや靴などの全身のトータルコーディネートをしていく。そして、それをきかっけにしてブランドやオリジナル商品の品質の良さを知ってもらう。普段、洋服に興味が無かった人にも興味を持ってもらうきかっけになると思うんで す。そういったことにこだわってMDをやっていました。

―最近のお客さんのニーズはどんなものが多いんですか?

実際のところ、男性は興味がないというよりも「よく分からない」というのが前提としてあると思うんです。よく分からない状態だからそのままのニーズで マーケットインの商品を提供すれば良いというのではなく、「こういう風にしていきましょうよ!」という提案が大切だと思いますね。
また、新婦となる女性の視点も大切です。結婚式の様々な決定ごとでは、女性の方が力を持ちます。初めて来店いただいた方に「どのように訴求するか」というよりも、新婦となる女性に対して新郎のコーディネートを提案していくイメージが上手くはまりますね。

―そうですよね、結婚式ってトータルコーディネートですもんね。

結婚式場もいろいろなシーンを想定した会場があると思うんですが、それぞれのシーンにあったような商品が提供されていることは少ないのかもしれないですね。
一生に一回の結婚式という機会なんですから、他の人と被りたくないじゃないですか。自分の結婚式ほど自分が被写体になる瞬間ってありませんしね。それは男性でも思うんじゃないかな、と。
 

日常シーンでも身に着けられるように生産背景にこだわった自社ブランド

「逆転の発想で新しい価値観を」

―では、プライベートブランドを開発いたしましたが、商品の評価や今後の期待などを聞かせていただけますか?

ブライダルのレンタル商品は結婚式のその日1日だけしか使用しないので、色味や何となくの形で表現してパッと見さえ良ければいい、という考え方もあるとは思います。ですが、今回の開発商品は、蝶ネクタイを手結びで留められるようになっていたり、微妙な羽の幅の調整であったり、生地の原産地などへのこだ わりを持っていたりします。
消費者に対して「また日常でも使いたいな」と思ってもらい、使ってもらえるかどうかはこだわっている部分ですよね。

商品を購入した時に「この商品を付けて、どこかに出かけていきたい」という動機を喚起させていく。そういった発想はブライダル業界ではこれまでは無かったことです。消費者が自身の結婚式をきかっけとしてブライダルの商品を知ったからこそ、「もっと洋服に興味を持っていきたいな」とか、そういう行動変化を起こせるともっと良いアイテムになってくると思いますね。例えば、今回製作をされたコットン素材の蝶ネクタイであれば、少しカジュアルのシーンでも使ってもらえますよね。例えば、ショートパンツのセットアップにも使ってもらえると思います。いろんなシーンが考えられますよね。

久住さんと弊社プロダクト事業部長

―ブライダル業界において、買取販売形式は珍しいんですか?

珍しいですよ。まだほとんどないですね。「たったの1日だけなんだからレンタルだよね?」という発想になりますよね。でも、購入するんだったら結婚式後も自分のものになって、その先の日常シーンで使うことができます。手元に物が残るので思い出にもなりますし、また、その商品を通じてブランドを知ったり、興味を持ったりすることにつながりますよね。 私自身の経験でも4万円のシャツや8万円の靴が売れることがありました。売れるかどうか、正直、私も当時は疑心暗鬼でしたけど。でも、その時に思ったんです。逆に一生に一回だからこそ良いものを身につけたい、と思う人のニーズを喚起できていなかったと。

―たしかに、逆の発想ですよね。1日だけだからお金をかけないんじゃなくて、一生に一回の1日だからこそ、お金をかけたい人もいるんですね。

そうです。そういった価値観や商品の生産背景、こだわりを説明して納得をしてもらえれば、買取販売形式もスタンダードになっていきますし、もっと世の中にも新しい価値観が広がっていくと思いますよ。

新しい価値観で新しいマーケットを作っていく面白さがありますね。本日はありがとうございました。

久住英広さんプロフィール

株式会社トリートにてトータルのMDを担当。
企画、製作、人材教育、空間プロデュースを総合的に経験。なかでも紳士アイテムを強化した売り場づくりの手腕が高く評価。
通常リース(タキシード以外)アイテムを販売に転換し、トレンド性を取り入れ商品回転率を高める事に成功し、服飾雑貨の売り上げをわずか数年で2億まで確立。ブライダル業界に販売の仕組みを持ち込んだパイオニア。