DESIGN 2014.06.25

【スペシャル対談】「ワクワクする仕事」を続けるデザイナーでいるために

  • Design
  • HTML5/CSS3
  • javascript
  • Smart Device
  • UI/UX

―今日は特別企画として、デザイン業界の第一線で長く活躍されている株式会社ツクロア代表の秋葉秀樹さんをお迎えして、「『ワクワクする仕事』を続けるデザイナーでいるために」というテーマで、株式会社IN VOGUE若手デザイナーのエースである谷口とお話をお伺いしていきます。

―まずはお二人に、簡単な自己紹介をお願いします。

秋葉:
DTPの仕事がデザインの勉強を始めたキッカケで主に東急線などの電車内窓上ポスターや電飾看板のデザイン、あとは雑誌のデザインにも関わりました、Webベージをつくり始めたのは95年あたりからだったと記憶してます

そこからFlashや3DCGなどにも割と興味があって、基礎ができてないくせに、やりたいことにはすぐに手を動かしていましたね。フリーランスは通算で10数年、去年自分の会社、ツクロアをつくりました
谷口:
専門学校でグラフィックデザインを学び、学生作品展での出会いをきっかけにWeb業界を志しました。学生時代からIN VOGUEでアルバイトをしていましたが、社員としては2013年に入社し、現在2年目です

―早速ですが、最近ワクワクしているテーマは?

谷口:
UIの設計・デザインに凄く惹かれます。学生時代は全くといっていい程触れてこなかった部分なので、すごく新鮮味がありますね
加えて、Webコンテンツやアプリ等デザインの対象によって全く違う部分があって、まだまだ『これが正解』というものが世の中に定着していない段階だと感じています。多用化した端末・サービスと人をどう繋いでいくのか。これからももっと変化していくでしょうし、自分はその過渡期にいるとおもうと、凄くワクワクします
秋葉:
PCからスマホ、さらにその次のデバイスは、そろそろ個人レベルでハードウェアを自作する人が増えてくるんじゃないか、と思っていますし、僕も注目しています
昨年、シリコンバレーでWebとハードウェアをテーマに発表してきました。Firefox OSというWeb技術のOSを使って、HTMLとCSSとJavaScriptだけで、Webページの状態に応じて外部の照明をつけたり消したりするもので、もはやブラウザの枠を飛び越えてWebは使える技術なんです

昨年シリコンバレー開催されたMozilla Summitで出展したブラウザとLEDライトなどハードへの連携デモ「Firefox OSベースのWebゲーム」

HTML5 Shooting Game with Leap Motion from Hideki Akiba__on Vimeo.
▲こちらはLeap Motionをインターフェースにした、空中で手を振って行うゲーム

秋葉:
僕らはWebという手軽に開発ができる恵まれた経験を活かして、ブラウザの枠を超えて生活にあるものを動かす、そういったことがワクワクするテーマであり、ウォッチしたいことですね

そしてそれをカタチにできる人はエンジニアだけでなく、デザイナーの力は必要不可欠なんです。ユーザーに一番近い部分、つまりインターフェースになる部分をデザインできるデザイナーが必要なんです

写真はEspruino、慣れ親しんだJavaScriptでハードウェアをつくることができます、Webにもつなげられるし、GPSやWi-Fiや温度センサー、サーボなどが別売りされて、それも全部JavaScriptで動かせます

▲JavaScriptで動かせるハードウェア、Espruino。Webにつなぐことも可能。

秋葉:
モニター画面だけじゃなくて、機械と人をつなぐのがインターフェースデザインだと広い目で見ることが大事ですね

―もはやエンジニアのお話を聞いているかのようです(笑)キャリアの長さはお二人で随分と異なりますが、キャリアを重ねる中でワクワクする事はどう移り変わっていっていますか?

谷口:
始めは綺麗な絵を作ることに必死でした。『アートとデザインは違う』と、学生時代から口すっぱく教えられてきたにも関わらず、『装飾』としてのデザインに拘りがちな時期もありましたが、次第に制作しているサービスやコンテンツがどう世の中に影響をもたらすかを考える時間が増えるようになり、それによって様々なものの見え方・感じ方・作り方が変わってきたように感じます

デザインにおける装飾の『役割』の重要性を案件ごとに肌で感じ、今までよりも深く考えて制作するようになって、そのプロセス自体を楽しめるようになってきたのかなと思います
秋葉:
最近の仕事は、デザインというか、サービスや仕組みの提案が多くなりましたね。僕に直接依頼してくる方は、家電メーカーの製品担当者さんから、スタートアップで開発をしているエンジニアさんまで幅広いんです

ちょっと前までの主な依頼内容はWebサイトやアプリのGUI改善でした。ところが、色々話を聞いていると、外観を変更するだけでは解決にならない要件があまりに多すぎるんです。きっと、見た目を変えることで、ユーザーの流れも変わると考えているんでしょうけど、ボタンの位置や配色、レイアウトなどを変えたところで急にユーザーが好んで使ってくれるとは限りません。そのことをまずは依頼主にははっきりとダメだと伝えるべきなんです

そして、発注側に思ったことを遠慮なくダメ出しするうちに、ロゴマークのVIまで相談されたり、そもそもサービスとユーザーの関係性について一緒に考えてほしいという依頼に発展したりします。僕が思うのは、学んできたアプリケーションスキルというのは、こういったコミュニケーションを経て初めて活躍できるものだ、ということです

―秋葉さんのお話を聞いたり、過去に執筆された記事を読むと「いつも楽しんでそうだな」と思えるから不思議です。そうはいってもワクワクばかりじゃない、ということもあると思うんですが、そんな時はどうするんですか?

秋葉:
うーん、悩む時は正直に悩むんです(笑)それが答え。つまり、制作に関わるパートナーに、わからないことはわからないと伝えることなんです。その上で他のパートナーの意見も聞いてやっぱり納得いくアイデアがでない時ってあるじゃないですか?その時『いやーやってみないとわからないじゃないですか』と正直に言えたらいいと思います

大規模なWebアプリケーションだと難しいかもしれないけど、Webって紙媒体と違ってアップデート(更新や修正)がやりやすい。Webの世界で制作に関わっているのであれば、『やってみないとわからない』は意外と正解に近いかもしれないって思うことじゃないかな?発注側にも『やってみないとわからない』に対してもっと許容や理解をしてもらうことにこちら側から努力するとか
谷口:
なるほど・・・いきなり100点は難しいから、そこでWEBの特性を利用していくんですね
秋葉:
だって100%確実にモノが売れる根拠を持ってる人はいないと思うんです。みんな試行錯誤してるんです。だからある時はつくり込まず、アップデートに耐えやすい仕組みをデザインに取り入れることをデザイナーも考えないとね。例えば画像文字じゃなくて、HTMLテキストやWebフォントを使うとか、装飾もCSSで問題ないようにレンダリングできるようにするとか
谷口:
常々『このほうが綺麗だと思うんだけどな』というような葛藤はあって、自分が良いと思えるデザインばかりにならないこともよくありますね。でもそれは、上流工程の方達が努力すれば解決するようなものでも無いと最近は思うようになりました

デザインの批評ってすごく繊細で、見た目ばかりの話をしてしまうと、ちょっとした言葉の認識やニュアンスの違いで大幅にブレたりしますよね。そういうコミュニケーション不足が原因になっている『ワクワクの障害物』は大なり小なりつきまといます

なので、もっとデザイナーがディレクターやプランナー領域に近づいて、プロジェクトの目的を限りなく同じ感覚で共有できれば、そういうブレから生まれるノイズは減少し『ワクワクする仕事』に繋がるのかなと感じています
秋葉:
僕ら、有名サービスの成功例に習おうとすることがあるんですが、そもそもそれが間違っていることがあるんですよね。このまえもあったんですが、あるスタートアップでリリースしようとするロゴマークをアルファベットありきで考えていたんです。tumblrのtとかの文字を取ったような感じ。でもそのサービスはtumblrみたいにメジャーじゃないし、しかも日本人やファミリー向けのサービスなのにそれに習うとユーザーとサービスとの心の距離がどんどん開いていく

オシャレさや憧れを意識することは気持ちが若い証拠かもしれませんが、そこが先行しちゃダメで、アイキャッチひとつでもユーザー層のパパやママ、おじいちゃんやおばあちゃん、子供さんが親近感を感じてくれるデザインってなんだろう?ということから考えることですね。アプリアイコンもアルファベットじゃなくてカナの方が親近感あるかもしれない。もちろん、ケースバイケースですが

―学生や新人に向けて、レベルアップのためのおすすめの勉強法、普段こんなことをしている、といった例があれば教えてください。

谷口:
最初はインプットとアウトプットの量と質をとにかく上げていくことが大切だと思います。しかし新人は、今までの学生レベルとは明らかに違うレベル感のクオリティを持ったアウトプットを否が応でも求められるので、自主的に行う勉強法という意味ではインプットが特に重要になってくるのかなとこの一年で感じました

『流行りモノ』的なデザインは普段からできるだけ追いかけるようにはしてます。有料アプリとかでも、UIとかデザインが気になったものは次々に買って触ってみたりとか(笑)興味のない分野でも、なんとなく見てると案外惹かれてったりするものもありますしね

―いろいろ見るから楽しくなるし、つくりたくなると。グッドスパイラルですね。

谷口:
そうですね(笑)

―秋葉さんは今に至るまでたくさんの技術の変遷を経験し、それぞれの最先端にいつづけているように見えます。そんな方はとても少ないと思うのですが、秋葉さんだけがやっていることってどんなことがあるのでしょうか?

秋葉:
最先端とは逆の話になりますが、これだけブラウザが進化してくると、色々な技術を試したくなります。しかし、Webってもう生活の一部なので、ユーザー側にスキルを求めないつくりを目指しています。これは

  • 最先端の技術への難しさ
  • 快適にユーザーに使ってもらう優しさ
を両立するためにデザイナーが必要だと思っています」
 
「知人のエンジニアと話していたことなんですが、電気、ガス、水道、道路、電車、Webは生活のライフラインと考えたらわかりやすいです。
  • 水を飲むためには水道を使う
  • 火を出す時はガスを使う
  • 照明をつける時は電気を使う
  • 移動する時は道を歩くか電車に乗る
  • 情報を得るためには、というとWebですね
どんなにブラウザが進化しようと、どんなに凝ったデザインを要求されようと、Webは常に情報の生活ライフラインであることを忘れずにいるべきです。ということは、ユーザーにスキルを要求しなくても水道の蛇口がひねられるのと同じくらいの手軽さで使ってもらえるデザインをすることだと思っています」

谷口:
目から鱗ですね・・・。Webはもう当然のように生活の一部だという視点で見ると反省すべき過去がちらほら・・・(笑)

―最後に、谷口さんからは学生さんや新人デザイナーに向けて、秋葉さんからは中堅以上のデザイナーに向けて、ワクワクして仕事をするために何かメッセージをお願いします。

谷口:
時間の自由の効く学生の間は、とにかく色んな物を見て、好きなものをつくるのがいいんじゃないかなと思います。僕ももしそうしていなかったら、今IN VOGUEにはいなかったと思いますし。デザインを楽しむことが大切なのかなと思います
秋葉:
僕は40代、50代のWebデザイナー、もしくはアートディレクターがいてもいいと思っています。もっと文字を大きくしたり、目に優しい配色にしたり、余計な機能をつけなかったりすること。しっかり発注者側とコミュニケーションがとれる人生経験が豊富な人がもっと声をあげるべきなんだと思っています。色々な年齢層や人生観を持つ人が関わる以上、つくる側もそういう人が関わる大切さをもっと意識してよりよいメディアと人の関係をデザインしていけば、私たちの仕事の評価も変わっていくでしょう

―今日はありがとうございました。